第3話|味噌の歴史と役割
第1、2話では発酵食の歴史、その特徴についてご紹介しました。第3、4話では日本の発酵食品の代表とも言える「味噌」と「醤油」についてご紹介していきます。
味噌の歴史
平安時代から続く味噌の歴史
味噌はとても古い調味料で、平安時代には既に用いられていた記録が残っています。
660年に滅んだ百済から日本列島に多くの人が移住した際、移住者の中に味噌作りの名人がたくさんいたのではないかと推測されています。そうしたことから味噌はかつて日本では高麗醤とも呼ばれていました。
承平年間(931-938)に著された『和名類聚抄』には
末醤は高麗醤ともいい、美蘇のことである。俗に味醤の字を用いる。本来は末醤といったが、末は搗末の意味である。末を訛って未とし、未を転じて味としたのである
と記されています。
当時の味噌は醤(ひしお)の一種で、米、麦を原料とする中国系の唐醤、大豆を原料とする高麗醤があり、いずれも食品につけて食べるのが主な使い方でした。
一方、現在の味噌は米、麦などに麹菌を培養したものに蒸煮した大豆と食塩を混合し、発酵熟成したもので半固形状と定められています。
地域の特色溢れる味噌のバリエーション
地方ごとに特色のある味噌が作られていく
醤油の製造業者には大メーカーが多いのに比べて、味噌は全国各地に大小の製造業者が存在し、地方により原料、色調、甘辛に特徴を持つ様々なものが作られています。
地方によっても特色があり、愛知、岐阜、三重の中部三県では豆味噌が、関東、九州では麦味噌が好まれていますが、最も一般的なのは米味噌です。
最も一般的に作られている米味噌
米味噌とは大豆を蒸煮したものに米麹を加え、そこに食塩を混合し発酵させ、熟成させたものです。
古来より味噌造りは「一麹、二炊き、三仕込み」と言われ、元気な麹菌、ふっくらと蒸煮した大豆、そして空気が入らないように材料をしっかりと混ぜて仕込むことが重要とされています。
仕込みの際に材料の配合を変えることで様々な種類の味噌を作ることができます。一般に麹の使用量が多い方が甘口となるので、原料の米と大豆の割合は、辛口味噌なら大豆が等量から約二倍、甘口味噌なら米の方を多くします。
今回の食材:味噌
食材に彩りをもたらす味噌の役割
保存効果に加え、臭みを消す効果も
味噌に含まれる脂質の主成分である不飽和脂肪酸、そして大豆から溶け出した栄養素、熟成中に産生される物質はいずれも抗酸化作用を有するため、食材が空気に触れて傷むことを防ぐ効果があります。加えて、魚や獣肉の臭みを消す効果もあるので、味噌漬けや味噌煮にすることにより生臭さを感じることなく魚や肉を賞味できます。
そのため様々な野菜や肉の味噌漬けが保存食として重宝されてきました。
栄養価が高く、豊富な旨味も
また、味噌では大豆のタンパク質がペプチドやアミノ酸に分解されているので旨味が豊富で消化吸収の効率がよく、栄養価も高くなっています。
さらに旨味と塩分の他に、微生物の働きにより生じる酸味と香気成分が含まれているため、食材にまろやかな美味しさとコクを与えてくれます。
味噌を使ったアレンジレシピ
アサリの酒蒸し汁鏑のゆずみょうが糀酢味噌風味
作り方
- 事前に、酢味噌(白味噌60g、お酢大さじ3、砂糖大さじ2)を準備し、アサリは洗って塩水で砂抜きをしておく
- 酢味噌を適量と糀味噌(的量)を混ぜ合わせ、酢味噌に糀の香りをつける
- 皮を剥いたカブラを賽の目に切り、カブラの葉茎を賽の目にしたカブラと同じ大きさで刻む(葉茎はカブラより少なめに)
- そこへ、千切りしたミョウガと、ゆずの皮を削り入れ、塩を適量降って混ぜ合わせ、浅漬けのようにしておく
- 鍋にアサリを入れ、大さじ1杯のお酒を入れて蓋をして強火に。アサリにしっかり火を通し、沸かし切ったら出汁を100ccほど入れて汁気を出す。
- アサリを盛り付け、カブラを和えたもの、味噌をのせ、最後にアサリの出汁をかけて完成です。
材料
- アサリ:1パック
- 鏑(小さめ):1個
- ミョウガ:4枚程度
- ゆず:1個
- 酢味噌(白味噌60g、お酢大さじ3、砂糖大さじ3):適量
- 十割糀味噌:適量
- 日本酒:大さじ1
レシピ考案者
國本 祥史|Yoshifumi Kunimoto
株式会社ワングローバル 本部長
2009年渡仏。シャンゼリゼ通りの5つ星ホテル(La Maison du Champs Elysee)内レストランにて部門シェフ兼副料理長を担当するなど数多くのレストランでの経験を経て2019年帰国。
今回のおすすめ商品
<岩手県>十割糀みそ(500g)
美味しい地下水、岩手県産の厳選されたお米と大豆100%を丹精込めて仕込み、じっくり熟成させたみそ
無添加
(藤勇醸造株式会社)